地域との連携を通した輪島塗り市場の活性化を目指す教育研究

研究者:松村 恵里(代表)
           秦  小麗 (形態文化資源学部門-特任准教授)
           吉田 泰幸 (形態文化資源学部門-特任准教授)
           田村うらら (伝承文化資源学部門-特任准教授)
           中森 義輝 (北陸先端科学技術大学院大学名誉教授)
           鳥谷真佐子 (慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師)
           桐本 泰一 (輪島塗製作会社「輪島キリモト」)
           細川 英邦 (輪島市役所産業部漆器商工課)
 

目 的:石川県輪島市を起点として生産される輪島塗は、漆工芸品の中でも際立った技術力の高さを誇るが、他地域の漆器と比較した際、技術力だけでは独自の優位性を明確化するのが難しいといわれてきた。なぜなら、漆器に用いられる色料は、色相に限りのある漆であり、装飾も金・銀と、伝統的な漆器には外見の相似性が強かったからである。しかし、生産地において輪島塗を、作り・売り・使ってきた人々には、外見だけで判断できない輪島塗の「良さ」が感じられるという。その「良さ」とは何なのか? 本プロジェクトでは、まず、日常的に輪島塗に触れるなかで生産現場側に生じてきた、輪島塗の優位性の明確化について、感性工学の手法を取り入れながら課題に取り組む。同時に、マーケティング手法を用いて対象顧客層を明確にし、生産現場と連携しながら、市場を活性化してゆくことを目指す。

概 要
【経緯】

  感性工学を用いた伝統工芸産業への応用は、元北陸先端科学技術大学院大学教授の中森義輝氏などによって、九谷焼き生産現場と協同することで、既に行われてきた。そこでは、アンケートや、感性評価調査が行われ、その結果を工学的手法によって分析し、デザイン開発などに生かされてきた。しかし、工学的な手法では、各調査課題における多様な傾向は把握できるが、より詳細な、データ結果間の関係性などまで把握するのは難しかった。また、量的調査では、より詳細な人の志向や感性にかかるデータまでを収集することは困難であった。そこで、このような感性工学の弱点を熟知した中森氏と協同し、質的調査である聞き取りや参与観察と工学的手法を組み合わせ、そこにマーケティング手法を取り入れる事で、それぞれの強みを生かした相乗効果を、疲弊する地場産業の発展に貢献させることができると考えた。 

 これまでの輪島塗を対象とした調査では、どの顧客層を対象に、どのように差別化した商品を提供できるかという、ターゲット設定とポジショニングのための調査・考察が充分とはいえなかったが、本研究では、これらを重要な基本要素として位置づける。このような、「だれに」「なにを」「どのように」アプローチするかという手法は、決して輪島塗産業だけでなく、他のモノづくり産業の活性化を考える上で、最も基本、且つ重要な点であるだけでなく、観光産業,教育産業等その他の第3次産業活性化においても必須の要素である。本研究を通して、地域が抱える根本的な課題に教育の一環として取り組むことで、「地域資源を活用して新たな価値を生み出し,雇用創出や生活向上に活かすことのできる」、「地域の課題を発見し,課題解決に繋がる行動を起こすことのできる」人材を育てることができ、学生への実践的教育が、将来的地域社会の活性化へ繋がる事を示すことができると考える